食べるペースがちがう二人
この間かつなりさんから、お互いの食事のペースが違う問題について指摘があった。
食べるメニューや量が同じであっても、大抵の場合、かつなりさんが食べ終わる頃、わたしの進捗は半分くらいだ。
どちらが良い悪いという話ではなくて、何が違いを生んでるんだろうね?という疑問として浮上したので、ひとまず食事中のわたしについて考えてみる。
食べ終わるのが名残惜しい
わたしは食べるのがほんとうに好きだ。食べ始めると同時に、食べ終わってしまう悲しみに見舞われる。なくならないでほしい。ずっとこの幸せが続いてほしい。
でも終わりは来る。それはもう覚悟した。ただ、食べ終わっても余韻まで楽しみたい。どの味で余韻を演出したら良いかしら。
だいたいいつも、そんな気持ちで食べている。なので、ひとくちの量も多くないし、その時そこにある全てのメニューをまんべんなく順番に食べていく。
最後のひとくちをどれにするか、極端に減りの早いメニューがないか、ペース配分を計算しながら食べている。食後のデザートのことまで考えている。
そんなことをしてるので、食べるのに時間がかかる。
味変をよくする
わたしはすぐに飽きる。同じ味や食感のものを食べ続けていられない。とにかくできるだけ常に「美味しい」と感じている状態で食べ続けていたい。
時々ものすごく好きで「こりゃ寝るまで食べられるぜ!」と思うものもあるけれど(この間、そのひとつである六花亭の「めんこい大平原」100個完食にチャレンジした。結果はまた今度。)、基本的には満腹より先に飽きがくる。
なので、よく味変をする。その味変にもまたいつ飽きるとも知れないので、一口ごと味を決める。「美味しい」が消えないように。
あと、「これにはアレが合うんじゃないか」という味の掛け算を自動的にしているフシもある。その検証も兼ねて、調味料はいろいろ試しがちだ。
そういう作業が多いために、食事に時間がかかっている可能性もある。
調理と出来上がりとの答え合わせをしている
基本的には自分で作って食べるので、食事は調理と出来上がりとの答え合わせみたいなところもある。
今回の食材はこうだったから仕上がりがこうだな、今回はあの調味料を使ってみたけどあっちのほうが合うかもな、加熱時間をこうしたら、調理法をこうしたら、と、いろいろ出てくる。買い物の時点まで遡ることも間々ある。
あとは、一緒に食べる人のリアクションをみて、これは好きそうだな、これはあんまりみたいだから次作るときは、と、これまたいろいろ出てくる。
自分以外の誰かが作ったものを食べるときも、どうやって作っているのか、何を使っているのか、想像しながら食べることは多い。
そんなのも手伝って食事に時間がかかっている可能性が無きにしもあらず。
五感フル稼働で食べている
食べる、というときに使うのは味覚だけだろうと思われるかもしれないけれど、そんなことはない。調理もそうなのだけれど、食事は五感をすこぶる刺激される。
お味噌汁の出汁の香り、一本漬けの胡瓜を齧る音、もち麦ごはんのぷちぷち食感、料理と食器との取り合わせ、旬の食材と季節の匂い、一緒に食べるひとの表情や会話。そういうのがいちいち嬉しい。そういうのをいちいち満喫しながら食べている。食べ始めて30年以上になるけれど、毎度新鮮に感動する。むしろどんどん感動するようになっている。
それから「食卓を囲む」という光景に弱い。いくつもの物語の中で、他人同士が食卓を囲んで「家族のようなもの」を形成する光景や、一人の食卓で自分と向き合う光景に何度も救われてきた。ひととの繋がりや自分自身があらわれる空間として「食卓」は、琴線に触れるというか、お守りみたいなところがある。
そういうのをいちいち噛み締めているので、食べるのに時間がかかるところは大いにある。
しあわせに食べている。
とまあ、改めて考えてみると、だいたいこんなふうに食べている。書いてみても、特別変わったことはしていないよなと思っている。
だがしかし、いかんせんわたしは同時進行というのがべらぼうに苦手なにんげんなのだ。いくら「食べる」にまつわる思考や感覚ばかりと言えど、これだけのことを感じたり考えたりしながら食べるとなると、処理速度は格段に落ちているはずだ。しかも今回は食にまつわることだけ挙げたけれど、実際はもっと関係ないことまでいろいろぐるぐるしながらなのでなおのことだ。そりゃ時間がかかる。
それにしても、しあわせに食べているなあと思う。飢えを恐れることも、時間に追われることもなく、食事を満喫しまくっている。
最近はふたりの食事ペースの時間差を利用して、かつなりさんが『ユダヤジョーク集』を音読してくれたりする。ひとりで食べているわたしを気にかけてのことだと思うけれど、ふたりのごはんも、ひとりのごはんも、音読タイムも、全部楽しませていただいていて、まあなんというか、しあわせでございます。
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